仕事を志事に。
働くことで幸せが実感できる社会の実現を願う、キャリアコンサルタントの中野敦志です。
47歳の頃、ある朝、通勤途中。
身体が会社に向かわない。
会社が近づくとどんどん気持ちが沈んでいく。
まずい、このままだとうつ病になる。と思った。
心にブレーキがかかる前に身体にブレーキがかかった。
行くな。
そして私の身体は会社とは反対の奈良に向かった。
小学校の時、遠足で行った「唐招提寺」。
時期も同じころ深い秋の時期だったように思う。
薬師寺の有名な高田好胤さんの話を聞き、唐招提寺に向かって歩いて、バスで帰った。
その道を辿ってみた。
かれこれ35年経過していたにも関わらず、その風景は当時と変わらない。
一気に心が小学生に戻った。
育てていただいた奈良への思いが生まれた。
それから会社から逃げるように、有休を消化しひたすら奈良巡りをした。
ある日書店に立ち寄った時に目に入った五木寛之さんの「百寺巡礼」という本。
五木寛之さんが日本全国の寺を巡り、由来や歴史、実際に訪れた感想などが綴られていた。
その時、私の心にかすかな変化が起こった。
会社から逃げるように奈良巡りを重ねる自分を責めていた。
しかし、その本を読んだとき、私の心の中にあるその塊が少し溶け始めた。
「寺をめぐることは意味のあることなんだ」と。
私は唐招提寺の南大門から金堂との間の空間が大好きです。
凛とした空気。掃き清められた参道。どっしりと構えた金堂の佇まい。
静かに金堂を眺める。
心が溶け始める。そして清められる。そして余計な力が抜ける。
いまここの空間は1300年前の鑑真和上の時代へとつながる。
日本の歴史が繋がり、そして私が存在した。
それだけでとても意味のあることのように感じられた。
中庸という仏教の言葉がある。
我ありて、彼あり。
先日のポジティブ心理学ワークショップにてタル・ベンシャハー教授が冒頭に話された。
AND。
・・・もある、そして・・・もある。
日本の文化には古からしっかりと根付いている考え方。
和を以て貴しとなす。
神仏習合。
そして、八百万の神々。
日本は、我ありて、彼あり。の文化なのです。
そして実は私、奈良検定2級なんです。